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信州の石仏   信州の石仏
   
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01民族の造型

民族の造型

石仏

  信州の石仏を手がけるようになったのはあとにも書いているように、柳宗悦師の影響の下で、信州石仏の造型的諸相の特徴に大きな興味を持つようになったことが最初である。中央より遠い信州には、もともとオーソドックスな仏教的造型諸相はそれほど本格的なものが多くなかったことと、時代をこえて、その大部分が仏教の亜流の造型であって、奈良や京都で見るような仏教渡来後の仏像のもつ素晴らしさを感ずるものに出会わなかったことが、民間信仰の石仏に眼を向けさせない理由であった。しかし柳宗悦先生の来信の都度、案内やらお伴をして何回となく歩いている間に、先生の求めている民間石像の面白さに漸次開眼されて、今度は独り歩きを始めた。その結果、約十年間にもそれ相当の遍歴を重ねた揚句、色々な記録が蓄積されていったのである。
また、京都の河井寛次郎先生の関係で、当時の美術評論家として有名な保田与重郎先生に、元禄時代の信州庚申像の中で特に私の好きであった塩尻市西福寺墓地内の庚申像の写真を差上げたところ、大変感心されて、「天魚」という雑誌に一文を書かれた。このことなどが、信州石仏写真集を出版する決心を堅めたいきさつであった。その時保田先生は、民族の造型力の永遠性を論じ、それが悠久に恒に新しく、民族の心の中に生息していることをこの石像は示しており、縄文期の造型力は何千年の後にも、そのままの新鮮さで現われるものであり、これはその驚異の証明である、とさえ絶讃されたのである。
しかしオーソドックスな仏教が生み出した造型はすでに元禄時代には様式的に洗練され過ぎて、仏教美術としては亜流に属する時代である。仏教美術の粋、即ち原初的な造型感覚を考えれば当然中国北魏あたりに遡るし、日本でいえば六世紀の百済観音に代表される仏像が大和朝廷にもたらされ、それを基に日本で造像された時代である。そしてその当時の新鮮な仏教造型にも、日本人本来のもつ造型力が働いたものと考えられるのである。
要するに保田先生の言をもってすれば、信州の片田舎に、しかも江戸時代というような比較的近代に近い時代に、ユニークで新鮮な感覚をもつ造型が生み出され、民間信仰の具体的な表現であるこの石仏に示された感覚が、時代と関係なしに民族の造型力が生き生きと表現されており、これは日本人の血の中に伝えられたものである、と説明されることになるのである。その造型的感覚は新しい民間信仰が燎原の火のように燃え拡がっていく時、常に発揮されたと考えられるのである。
そう考える時、中国における漢時代(西暦紀元前三世紀から紀元三世紀にわたる)頃の造型的感覚に通じるようなものが、十七世紀に当たる元禄の頃の石仏造型に感じられるということもあながち不思議ではない。しかも一番肝要なことは、中国にせよ、日本にせよその初期に造られた造型は間違いなく名もない庶民の製作であったことである。教養も、美術的審美眼もない一介の石工達がただその信仰にうながされて、全力を集中したこと、そしてそれの多くは協同の仕事であった。故柳先生の、美を見出すことの中で飽くことのないその遍歴の対象として、信州の石仏群の探索があったと考えられるのである。それは中国の有名な敦煌の摩崖仏も元禄の庚申像も本質的には同じものとしない訳にはいかない。まして北魏の残された仏像の中には贋物さえまじっているとすれば、信州の石仏こそは正真正銘のものとしない訳にはいかないのである。その意味で柳宗悦先生によって導かれた人間としては、「民芸」の世界から石仏研究の道に参入したものであるということになる。
本来が考古学者でもなく、また民俗学者でもないものが、ただ民芸の立場から理屈を中心とせず、石仏の美を求めて何年にもわたる遍歴をつづけたのである。
常に考えてきたことであるが、歴史的にも、民俗学的にも、また工芸的にも、オーソドックスなものからいえば、信仰の民間石仏はその歴史を数百年以前に発していながら、もちろんこれを系統づけたまとまった研究もなく、その研究はまだ五、六十年以前にやっと緒についた位である。これはかつての庶民の石仏などは研究の対象として価値のないものと思われて来たからだと考えるより仕方がない。日本の歴史の深さからいえば他に探らなければならないものが多くあり過ぎることにその原因はあると思われた。しかし例えば陶磁器の世界について考えれば、特に民窯の場合、最初にあったものは鑑賞の世界からその研究は始まったが、現在では全国にわたってその研究が進み、明治・大正頃のことを考えれば、相当、微に入り細にわたって日本各地のものが歴史的、文化的に研究、整理されてきたということが出来るであろう。
土地の物はただ使われただけで、他のことは知らずただ世人の鑑賞と興味の対象として浮かび上がってきた時、その研究が発掘などに進み、今日に至っているのである。例えば瀬戸の焼物では、愛知用水の掘削によって発見された黒壷にせよ、平安期から焼かれていた能登の古珠洲の壷にせよ、猿投山古窯の研究にせよ全く近代に属することである。要は鑑賞と民俗学的興味の対象として発掘して来ているのである。そして常にそこには美があった。また一面歴史的にいえば焼物にせよ、石仏にせよ時代相というものが大体共通して見られ、そのためには多くのものを見ることが必要である。鎌倉は鎌倉、室町は室町というように、同じ江戸時代でも初期、中期、後期の特質というものはそれによって判断出来るはずである。
民俗学者の陥り易い欠点は案外この時代相を信用せず、いい伝えとか、彫られた文字というようなものに固執しやすいため、例えば創立時代の石像があまりに傷み過ぎて、後代の人達によって復原され、記念のために当時の年号を彫ったものなどを見て、創立時代の年号に結びつけるような誤りを冒しやすい。やはり大体の時代相が印象的に頭の中に入っているものにとっては、すぐこれはおかしいと疑問がおきてくるはずである。このような問題は刀剣の鑑定方面においては驚くほど正確に進んでいるのである。
造型的観賞による時代相とこれを明確化できるような具体的証拠が一致した時、これは正しい歴史的事実となるのである。

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